第12回・・・MIND THE GAP(1)

「ミリオネア」日英比較


※MIND THE  GAP・・・ロンドンの地下鉄で何度も耳にするアナウンス。日本でいう「電車とホームの間が空いておりますので、お降りの際は十分にお気をつけ下さい。」の意味。この長ったらしい文章を向こうは3語で済ませる。発音は「いんだっぷ」が近い。

今、日本の「ミリオネア」を初めてリアルタイムで見終えたところです。で、先週私はロンドンに行っておりまして、本家のミリオネアをリアルタイムで見てきました(ITVという局で月曜9時から約1時間放送していました)。今回はその比較を、お互いの内容を忘れないうちに(どちらもビデオには撮らなかったので)書こうという趣向です。こういうものはリアルタイムで見ないと感じられない部分がありますんで。

まず、大まかなルール・演出上の違いはほとんどありません。セットも音楽も、司会者が小切手をチラつかせる様も全く同じです(エンディングで解答者やその家族の感想が流れる、というのはなかったかも)。単純な質問文となっている問題も、似た感じに作っているように思います(イギリスではクイズ全般において「前フリ問題」は皆無なんです)。
ただし、本家の最高賞金は文字通りの「ミリオン」、100万ポンド。これは日本円で約1億8千万ですから、大きな違いです(間違った時の賞金も、本家の方は前問時の75%くらいもらえたはずです)。しかも、それを1人占めできるわけです。日本はどういうわけか「5人1組」になっており、それを示すために「テレフォン」がTV電話になっていましたね(本家の電話は声だけ、相手は1人です)。

次に印象としての違いについて。まずは、出題から「FINAL ANSWER」まで。私が本家版で惹きつけられたのは、この間の解答者の葛藤する姿でした。司会のクリス・タラントは最低限の言葉しかかけません。その代わり、解答者が自分の思いをとつとつと口にします。どの答えにするか、「ライフライン」を使うか、あるいはドロップアウトするかどうか。迷う解答者のモノローグが緊張感を与え、感情移入を可能にします。
この部分は日本では、「みのもんた」と解答者のやりとりの時間ととらえられているようです。それはそれで、日本版の良さだと思います。今回の放送では、3番目の黄色い服の男性が本家版に近く、自分の考えを口にしていましたが、それよりも1番目の(500万を獲得した)おとなしめの男性と「みのもんた」とのやりとりの方が面白く感じ、入りこむことができました。「内面を引き出す」手法の方が日本人には合っているかも知れません。

それから、正解発表。本家で一番魅力的だったのは、ここでした。クリスは非常にドラマチックな正解発表をします(もちろん賞金が高額の時)。例えばこんな感じ。

当然この間、解答者の一喜一憂が映し出されるわけです。この辺、「みのもんた」はやけにあっさりしてるように思われました。他の部分はかなりクリスに近いので、是非この部分もクリスを意識して欲しいところです。「みのもんた」なら出来ます!!

さてさて、両者を比較しての一番の大きな違いは何か・・・。それはズバリ言って観客です!日本の観客は最初、書き割りかと思いました。松本人志風に言うと「僕にしか見えない人」かと思いました。それくらい静かです。本家は高額の問題で正解が出ようものなら、応援するチームのシュートが決まった時のサッカースタジアムのような騒ぎです。
といっても私はスタジオの観客を批判するわけではありません。彼らに、Jリーグ並みの無理矢理のハシャギぶりを期待するわけではありません。騒ぎたくとも本心からは騒げないのです。それはスタジオの観客だけでなく、視聴者も同じです。「みのもんた」はエンディングで「あなたの仲間が1,000万円に挑戦します」みたいなことを言ってましたが、大多数の視聴者は仲間意識を持てないのです。

私はそれを、感情を出さない国民性とか、賞金の大きさの違いではなく、「クイズ」の文化的な在り方の違いによるものだと思っています。そしてそれが、この番組が日本でイギリスほど盛り上らないであろうと考える理由にもつながっていきます。そこで次回は、「イギリスのクイズ文化」について詳しく述べていこうと思います。

おまけ・・・ロンドンで買ったミリオネアの本2冊。よく見ると日本で「円」のマークになっている部分が「ポンド」のマークになってます。でも日本版の正式タイトルは「クイズ(「ドル」のマーク)ミリオネア」なんですよね。

 

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