第16回・・・「キング・オブ・クイズ」出場記(前編)


1月29日(月)。会社のボーリング大会から帰り、録画してあった「スーパーボウル」を見ていた時に携帯が鳴った。BS日テレ「キング・オブ・クイズ」の制作会社からだった(番組の内容をご存知ない方は、まず同番組のサイトでルール等をご確認下さい)。
1月20日の同番組のクイズで最高点を記録し、キングへの挑戦権を獲得したという旨と、収録に参加できるかどうかの確認の電話だった。もちろん出場はOK。それまでにも何度か惜しい結果を出しながら(最高点を出しても同点が何人がおり、抽選に敗れたこともあった)、叶わなかった番組出演の時がやってきたのである。
収録は2月10日(土)、アンケートを後日メールで送付、その他詳細は後日連絡、ということでこの日の電話は切れたが、その日の夜中にはアンケートが届いた。質問事項がかなり多い。「クイズ番組出場歴」「得意なジャンル」といったものはもちろん「2000年に活躍した人を1人選ぶとすると誰?」とか「昨年の自分のニュースベスト5」とか「最近怒っている事」などなど。少しでも有利な問題が出れば、という意識も働き、1時間ほどかけて細かく記述。レイブンズの勝利を見届けながら送信した。
しかし後に聞いたところ、このアンケートは出場者のキャラクターを番組内で紹介するために使うだけで、クイズ問題の作成には関係ないとのこと。な〜んだ。

で、2月6日(火)に2度目の電話。集合は14:30、場所と地図は後日メールで、当日交通費を立て替えるので領収書を忘れずに、アンケートに「アルコールは苦手」とあったができればビールを飲んで欲しい(この番組はサントリーの1社提供)、服はスーツで(言われなくてもそのつもりだった)、2本撮りなので勝ったとき用にもう1着スーツを、2連勝したら次は再来週収録、といった内容。
新幹線の指定席を予約したり、スーツをクリーニングに出したり、おいしそうにビールを飲むコツを研究したりして、クイズの対策もロクにしないまま(する気もないが)時は過ぎていった。

2月10日。午後集合なので、仙台で目覚める。収録場所の地図がようやくメールで届き(FAXが無いのが不便だと初めて思った)、いざ出発。方向音痴で不安だったものの、地図のおかげで迷うことなく東品川の「IMAGICA」に到着。時間より早目に着いたが、先週のキングは既に到着し、勉強中であった。遅れてやってきたスタッフに連れられ、控え室に通される。
ここで対戦相手としっかりご挨拶。相手は中新さん。埼大クイ研のOBで私より学年は1つ上。「オープンでよく見かけました」と言われたが、申し訳無いことにすっかり覚えていない。社会人を4年間もやっていると、大学時代の記憶など、どんどん曖昧になっていくものだ

まずアンケートの内容について、スタッフとナレーター(BET数や解答を読み上げたり、解答中に出場者に質問してくる女性)からいくつか確認がある。内容自体よりも、「仙台から来た」ということに最も興味があったようだ。それもそのはず、首都圏以外からの出場者は初めてだったらしい。遠方の人に出場依頼をして断られたケースがかなりあったようで、「わざわざ遠くから来ていただいてありがとうございます」的な雰囲気が感じられた。仙台は2時間もあれば東京に来れる所なのに・・・、と逆に恐縮してまう。

続いてスタッフから簡単なルールの確認と、諸注意。そして、こんなお願いが。「この番組は、ただクイズをやってるだけになっているので、まあ賛否両論あるんですが、出場者の方にもっと自分からしゃべっていって欲しいんです。『これ知ってる!』とか逆に『わかんない!』とか。お互いに相手を挑発するのもありです。」
無理!こういうのを中途半端にやるのが一番寒い!そもそもこの番組は「21」という、映画「クイズ・ショウ」の舞台となったクイズ番組を意識した作りになっている。緊張感の中で淡々とクイズを進めていった方が雰囲気には合っているはずだ。それに見ている人の多くも、ただの視聴者じゃなく「参加者」なのだから、クイズやってるだけでも不満は少ないと思うのだが・・・・。
まあ、始まったばかりでいろいろ試行錯誤の段階なのだろう。私としても、しゃべりはしないものの、「正解・不正解に対する反応は大きめにしておこうか」という気持ちにはなった。動きがはっきりしていた方がわかりやすいのは確かだし。ただ、リアクションを期待すると「芸能人の方が良い」という結論になってしまうのだから、視聴者参加にするのなら、違う方向性で見せていかないといけないとは思う。
それから、こんなことも言われた。「伊武(雅刀)さんは俳優歴は長いですが、司会はこの番組が初めてですので、緊張されてます。是非、伊武さんをリラックスさせるようにお願いします。」
普通、逆じゃん!司会者が解答者の緊張を解くんじゃないの?それに、何よりも伊武さんの司会ぶりは非常に評判が良い!「視聴者参加クイズ番組の成功要因の4割は司会者、3割は企画、2割は問題の質、1割が解答者のキャラ」というのが(8歳の頃からの)私の持論である。印象に残るクイズ番組には必ず印象に残る司会者がいる。この点では、この番組も既に成功していると言える。伊武さんの緊張感が司会の面白さにつながっているのなら、緊張されたままの方がいいと思うのだが・・・。

そんなこんなで、いよいよスタジオに移動。その前にピンマイクを装着してもらう。ピンマイクを使った番組に出るのは初めてだ。何か芸能人になった気分。そういえば「アタック25」に出たときには、しっかりドーラン(はドイツの会社名)を塗ってもらったが、そういうのは一切なかった。デジタルなのに
スタジオの前室で、大勢のスタッフにご挨拶。ここでも「仙台からお越し頂きました」と紹介される。すすめられるがままに、派手なスーツを着た人の前に行き「よろしくお願いします」と言ってよく見ると、その人こそが伊武雅刀さん!すかさず、
「ほぉ〜、仙台。笹かま!」
と言われる。シュールだ。その後も気さくに話しかけて下さり、リラックスすることができた。伊武さんは最高の司会者です!

さて準備万端、いよいよ本番スタート、と思いきや、とんだアクシデントが発生。バニー(が解答者の横に侍っているんです)の1人が半泣きで入ってくる。直前に転倒してしまったとのことで、足にアザができ、網タイツも少し破れている模様。予想だにしてなかったバニー待ち。その間に我々解答者はスタジオに入り、ルールとボタン(BET用と解答用がある)の最終確認をさせて頂く。
セットは思ったより大きく、キングの解答席ともかなり離れている。やはり、会話するのは無理だ。また、解答中は問題・選択肢を書いたカンペが挑戦者用のカメラのそばに出されるようになっている。司会者もバニーも視界には入ってこない。否が応にも、クイズに集中せざるを得ないのだと悟った。

肩の力は抜けているが、良い緊張感は漲っている。いつにない感覚だ。いよいよバニーがスタジオに入る。と、さっきの転倒したバニーがこちらの席に近づく。ふと思う。もしかして、彼女の泣き顔や破れたタイツが映ってしまったら、私が何かしたと思われるのではないか、と。
余計な不安感に襲われつつ、収録開始の時を迎えた。

(つづく)

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