第17回・・・「キング・オブ・クイズ」出場記(後編)


「ようこそ、『キング・オブ・クイズ』へ。今、巷では梅が満開です。いい匂いですねえ。梅にウグイス、牡丹に唐獅子。『キング・オブ・クイズ』といえば・・・えぇ私も、放送の仕事に携わってアバウト30年近く。ありがとうございます。さぁ、それでは早速、2人の解答者をご紹介致しましょう。」

文字にすると何だかわからん内容だが、それを伊武さんがしゃべると一気に番組の雰囲気が出来上がる。見事だ。そして、カンペが出され解答者の紹介。えっ?ワカキテンサイ?
「第8回の放送で最高の成績をおさめた、若き天才クイズプレーヤー、秋元雅史さん。」
うわっ、カンペ通り読みやがった!「梁山泊」ポーズで挨拶をしながら困惑至極。もう若くないし、天才でもないし、ましてやクイズプレーヤーでもないのに・・・。で、オンエア見ると唇上がりまくり。緊張が思いっきり表情に出ている。

オンエアではここでエントリー方法の説明が入るが、これは別撮り。実際にはすぐに出題が始まる。

第1問 カモシカは何科の動物?
      1.カモ 2.シカ 3.ウマ 4.ウシ
まずは、クイズによく出る「何科」問題。この問題もどっかで聞いたことがある。BETは2点、そして4番のボタンを押す。するとバニーが近寄ってきて「BETは2点までですよ」と言いだす。どうやらBETボタンと解答ボタンを混同しているらしい。まだ転倒したことに動揺しているのだろう。ここはやさしく「BETは2点です」と説明してあげようとしている時に、ナレーターが私に「緊張してらっしゃいますか」と聞いてきた。私はバニーへの説明に夢中で、無視する形になってしまい「答える余裕もないですね」と言われてしまう。やばい、印象が悪くなったか?さらに緊張が高まってしまう。

正解は4番。キングもBET2で正解。2対2

第2問 錯角の関係にあるのはどれ?
      1.aとb 2.aとc 3.bとd 4.aとd
     

問題、選択肢と共に、上のような手書きの図がカンペとして出される。懐かしい。私は文系だが、数学は大の得意であり、大学にも数学の出来が良かったおかげで入れた。そして大学時代は塾講師のバイトで、中学生に数学を教えていたのである。錯角もその頃に何度も教えていた。当然BET2である。
さて、錯角・・・、え〜と錯角だろ、錯角、錯角・・・。錯角って何だっけ?覚えてない!頭が真っ白になる。パニック!BET2にしちゃったぞ、どうすんだよ!!!
わずかな時間で知識をフル稼働させて思い出したのは「錯角は等しい」ということだけだった。あわてて図を眺める。等しいのはどこだ?aとbだ!いや、これは確か対頂角だったな。その他に等しいところは・・・あっ、aとdだ!これだ!選択肢には・・・あった、4番だ!多分そうだろう。

答え終わったところにナレーターから「挑戦者、今度は聞いてくれてます?」と言われ「聞いてます!」と答える。悪い印象は与えていなかったようだが、「笑顔がかわいい」とか言われてしまう。完全におちょくられてる
解答発表はキングから。「キング、3番。」
ん?3番って何だ?bとd?あっ、錯角ってこれだ!しまった・・・。4択なのだから、選択肢を順に検討していけばいいのだが、パニックに陥ってしまい、図ばっかりに目がいっていた。失敗した。
正解はもちろん3番。これで0対4。致命的な誤答だ(この形式では、一度リードをされると非常に苦しくなる)。今から考えても情けない。「若き天才クイズプレーヤー」なのに、しかもオンエアでは「東京大学卒」って思いっきり紹介されてるのに。普段「分数ができない大学生」を憂いているというのに・・・。まあ、社会人を4年間もやっていると、大学時代の記憶など、どんどん曖昧になっていくものだ。それだけ、社会人生活が板についてきたということなのだろう(こういうのを英語では「ポジティブ・シンキング」といい、日本語では「言い訳」という)。

バニーが次の問題の準備に入るため、少々休憩。しかし、ショックから立ち直れぬまま次の問題へ。
第3問 次の中で、バスケットで反則にならないのは?
      1.服を引っ張る 2.相手を威嚇する音をたてる 3.ボールを奪う 4.ゴールを手でふさぐ
知らない。ただ、「ボールを奪う」のが反則だったら相手がシュートするまでボールを奪えないことにならないか、という疑問が浮かぶ。おそらく3番だろう。BETは2点だ。
正解は3番(相手の体に触れなければボールを奪ってよい)。やった!キングはBET1で不正解。2対3。まだチャンスはある。

第4問 日本の山で2番目に高いのは?
      1.北岳 2.奥穂高 3.槍ヶ岳 4.乗鞍岳
これは簡単。カンペが出るのが遅れてちょっと焦ったが、BET2で1番。当然キングも同じ。両者正解で4対5。余裕の正解だったが、意識的にガッツポーズをとる。ただ、正解発表→キングの得点発表(キングのワンショット)の後に挑戦者の得点発表(挑戦者のワンショット)があり、その段階で初めてリアクションをとることになるので、非常にやりにくかった。
解説時に「私も時々、高尾山に登ります。」との伊武さんのコメント。これには素で笑ってしまった。

第5問 小学1年生で習わない漢字はどれ?
      1.名 2.校 3.赤 4.従
素直に考えれば4番だ。だが、確信が持てない。なぜ、この選択肢なのだろう。意外性を狙った問題なのかも知れない。迷った挙句、BET1で2番を選ぶ。キングはBET0。正解ならば並ぶことができる。
しかし、正解は4番。3対5。オンエアではカットされていた解説によると、「『』という漢字を習うのは小学校6年生。丁度、反抗期を迎える頃ですやられた!解説で「なるほど」と思わせる手法は、私もこのサイトでよく試みているのに。

第6問 パソコンで「々」はどう打つ?
      1.ノマ 2.クマ 3.オナジ 4.チョンチョン
これは番組のHPや番宣で、視聴者に事前に知らされた問題である(毎週こういう問題が1問ある)。しかし、もちろん我々には知らされていない。というわけで、必死に考える。「々」が「ノマ」と呼ばれるのを聞いたことがある。引っかかるのは「パソコンでどう打つか」という点であり、「オナジ」で変換したことがあったようにも思えたのだが、耳慣れた「ノマ」を答えにする。BETは2点。キングはBET1。解答は両者1番。正解か?また1点差に戻せるのか?
しかし、正解は3番。これで1対4。もうダメか。
※ここでおまけ問題。パソコンで「…」はどう打つ?

第7問 (オンエアでは映画「弟切草」のワンシーンが流れ)「弟切草」はどれ?(絵を見せる問題なので、選択肢は省略)
この番組恒例のビジュアル問題。私はビジュアルクイズが好きだが、得意ではない。特に花とか魚とか車の種類を当てる、なんては大の苦手だ。花は「花」、魚は「魚」、車は「車」としてしか頭に入ってこない。どれがツツジでどれがカツオでどれがファミリアかといった「分類」ができない脳味噌なのだ(もちろんツツジとカツオとファミリアを混同することはない)。それにここで間違ってしまうと、残りの6問のうち1問でも間違えるどころかパスをしても、13点には届かないことになる。そんなわけでBET0(解答せず)。キングはBET1で4番。
正解は3番。葉の黒い斑点が兄に切られた弟の返り血だと言い伝えられているとのこと。なるほど。1対3。首の皮1枚つながったという感じか。得意なジャンルが出ることを祈って次の問題へ。

第8問 J1でないチームはどれ?
      1.アビスパ福岡 2.コンサドーレ札幌 3.川崎フロンターレ 4.ヴィッセル神戸
よりによって大嫌いなサッカーの問題とは!しかも「2軍のチームを当てろ」ということだ。私に言わせれば、世界と比較すりゃ日本のサッカー自体が2軍だ。もっと言えばサッカーというスポーツ自体がアメフトの2軍だ!そんな2軍のスポーツの2軍の国のリーグの2軍のチームを当てろなんてどういうことだ!と思いつつも、この問題が「うまいところを突いていて、正解者も多いだろう」ということは否定できない。
そこで冷静に考えてみる。これはJ1から落ちたチームということだ。札幌は確か昇格したから違う。福岡は「落ちそうで落ちない」というイメージがあり、落ちれば私の耳にも入ってくるだろうから違う。3か4だな。
2つに絞ったところでBETを考える。0で逃げてもいいが、そうすると残りを全問正解しなければ13点にはならない。かといって、間違えてしまえば13点の可能性は無くなる。しかし、キングはおそらくこの問題に正解するだろう。BET0だと1対5。ここで4点差はまずい。相手に勝たなければ何点だろうが意味はない。BET2で勝負だ!
そして解答。3か4かで最後まで迷う。途中でナレーターに「サッカー観戦はしますか?」と聞かれたので「全く見ないです!」と言い放った。実は近所にベガルタ仙台とかいう2軍のチームの本拠地があるのだが、見たいとも思わん。勘で3番を選択。キングも3番。良かった、合ってたんだな。
両者BET2で正解。3対5。まだまだ気が抜けない。今度こそ得意ジャンル来い!

第9問 「そろそろアカデミー賞の季節ですねぇ。」と伊武さんが語る。映画も苦手だ!

     次の俳優の中で、アカデミー監督賞を獲っていないのは?
      1.ケビン・コスナー 2.メル・ギブソン 3.クリント・イーストウッド 4.トム・ハンクス
1と3は受賞している。2か4だ。メル・ギブソンってこないだ1日だけ日本に来た女だろ?お茶のCMの。監督もやってんのかな?まあ、ジョディ・フォスターも監督やってるしなぁ。トム・ハンクスは2年連続主演男優賞だし、出演作も何となく頭に入ってくるから、さすがに監督賞を獲ったら覚えてるだろう。それが記憶にないってことは4番が正解だな。よし、BET2だ。
正解も4番。キングも正解したがBET1だったので5対6だ。深々と頭を下げてみる。なお、解説で「メル・ギブソンは『ブレイブ・ハート』で受賞」と聞くまで、私はメル・ギブソンとメグ・ライアンを混同していたことに気づかなかった。もっと映画を見なきゃダメか。

第10問 次のうち、名前がギリシャ神話の女神の名前に由来しているのは?
      1.アディダス 2.フィラ 3.ナイキ 4.プーマ
久々に馴染みのある問題が来た。ナイキで間違いない。両者BET2で3番を選択し、正解。7対8。組んだ手を頭に当て、喜びをかみしめていることを表現してみる。
しっかし、ライトが熱い。喉がカラカラだ。そして疲れる。TVの前で挑戦している時には長く感じるシンキングタイムの30秒だが、出場するとその間にBETを決め、解答を導き(この時点では解答ボタンを押す必要はないのだが)、さらにナレーターと会話をしなければならない。カメラは常にリアクションを狙っているし、ピンマイクはちょっとした声も拾ってしまう。薄氷を踏む思いで解答を続けてきたので、一休みしたい心境だった。

と、ここでいつもの番組内CM。解答者がサントリーの商品を口にするシーンがお約束だ。ウイスキー「響」と「南アルプス天然水」が置かれた横に、水割り用のグラスに注がれた液体が映し出される。そしてそのグラスの中身をおいしそうに空ける。水分が欲しかったので、本当においしかった。サントリーの烏龍茶、最高!
そして、しばし休憩。ここで冷静にこれからの展開を考える。残り3問はBET0禁止、ということは結局全問正解しないと13点以上は確保できない。キングはBET1で1問間違えても、最終問題をBET4で正解すれば13点に届く。実は、この1点差が大きな違いを持っていることにようやく気づいた。それでもわずかな可能性を信じて運命のラスト3問へ突入。

第11問 ご機嫌取りのことを、日本では「ごますり」と言います。では、英語では何磨きという?
      1.ガラス磨き 2.リンゴ磨き 3.長靴磨き 4.歯磨き
これも有名。2番だ。もちろんBET2。キングも同様に2点を獲得で、9対10。とりあえずホッとしたものの、こうした問題が続くと逆転は不可能だとも思ってしまう。かといって難しすぎても正解できないのだが。

第12問 次の大統領の中で、右利きなのは?
      1.ジェラルド・フォード 2.ジョージ・ブッシュ 3.ビル・クリントン 4.ジョージ・W・ブッシュ
確かクリントンは左利きだったはずだ。それとフォードも何となく左利きだったような気がした。おそらくブッシュ親子のどちらかだろう。2か4か。勘に頼るしかない。BETは2点のボタンを押す。解答も同じ数字だろう!と2番を押した。ナレーターに「挑戦者は・・・」と質問されかけた時に「時間です!」と伊武さんが叫ぶ。思わず「あっ」とつぶやいてみると笑いが起こる。受けた、受けた(松本人志風に)。キングは堅実にBET1で1番を選択。答が分かれた。こちらが正解なら同点だ。
しかし、正解は4番。7対9。これで13点獲得→勝ち抜きの目はなくなった。勝ち抜くと次の相手は道蔦さんと知らされていたので、勝てはしなかっただろうが、話のタネに戦っておきたかった。残念。あとはこの勝負に勝つことに専念する。しかし、それとて自分が正解してもキングが誤答しなければならず、自身の力だけではどうしようもない話だ。奇跡よ、起これ!

第13問 交差点の信号機の電気代はどこ持ち?
      1.警察 2.市町村 3.国土交通省 4.電力会社
とりあえず、クイズによく出る問題でなくて安心する。キングに誤答の可能性があるからだ。しかし、こちらも答がわからない。落ち着いて選択肢を眺める。まず、市町村が消えた。これだと東京都の「区」だとどうなるのかが不明だからだ。「市区町村」という選択肢であれば迷っていただろう。それから国土交通省も嘘臭い。お役所は認可とかをするところで、実際にお金を払ったりするイメージはない。
残るは1か4だ。迷いに迷う。警察か電力会社か。電力会社といえば仙台は東北電力である。東北全体のおびただしい数の信号機の電気代をいちいちチェックしているのだろうか。それよりも管轄エリアが狭く、きっちり分けられている警察の方がもっともらしいのではないか。これが最終判断だった。BET4で1番。キングは当然BET4。
そして解答発表。キングの答は・・・4番。答が分かれたことで、逆転の可能性が残った。しかも迷いに迷った4番である。1番にしたのはとりあえず正しかった。しかし解答として正しくないと意味がない。カットされていたが、ここでナレーターから両者に「自信は?」と質問がある。どちらの答えも「ありません」だった。

そしてついにこの時が来た。「正解は・・・」伊武さんが叫ぶ「1番です!」

「ヤッター」。思わず飛び上がり、ガッツポーズを取る。自然に笑顔が出る。そしてこの時のリアクションが一番大きかった。11対5。13点には届かなかったが、まさかの逆転勝利だった。前に出て伊武さんから賞金を頂く。控室で見せられた札束(お約束らしい)の、枚数が半分になったものが手渡された。まだ実感が沸かないが、嬉しさは込み上げてくる。思わず、札束を覗き込んだり、カメラに見せたり、カットされたが最後には手を振ったりといろいろやってしまった。

さて、賞金について。札束をそのまま持ちかえり、豪遊をした・・・というのは嘘で、収録後札束は回収。2ヶ月後に1割引かれて銀行に入金、というのが本当のところだ。そう、まだ手に入っていないのである。
額に関しては10週勝ちぬいて1,000万円という夢もあったが、これが今の自分には丁度いい、勘違いしないギリギリの額だと思う。
使い道だが、一部は先払いで仲間内に還元させて頂いた。今まで真剣にクイズそのもの(クイズ界とかじゃなく)と格闘してきたことの報いだと考えれば、その手助けをしてくれた人たちに恩返しするのは当然だと思っている。残りをどうするかは決めていないが、働いて稼いだお金と区別するためにドルに替えようかとも考えている。

収録後、プロデューサーと構成作家さんに感想や意見を求められる。今回の展開には満足だった御様子でありがたい。いろいろと話をしてわかったことだが、クイズに関しては「とにかく13問の中でオールラウンドな出題をしたい」という考えがあるらしい。そして、クイズ本の類は全く参考にしていないという。こうした姿勢には大賛成だと述べておいた。特に今回の13問は素晴らしかった。私が珍しく「自分のクイズもまだまだ狭い」と思ったのだから。
ビジュアル問題も、そうした姿勢の表れである。中新さんと「クイズサークルではビジュアル問題はあまりやってなかった」という話をすると「何でやらないんだろうね」と言われたことを付け加えておく。
また、2人の共通の意見として、「TVの前でもBET形式で(要するにTVの中と同じルールで)参加できれば、もっと面白くなる」という提案をした。システム的には難しいかも知れないが、あの駆け引きや緊迫感をお茶の間でも感じることができれば楽しさは倍増するだろう。実際に出場したときの作戦もたてやすくなる。
※例えばあの最後の問題。キングはBET4なのだから(ラスト3問だけは得点の高い方からBET数を発表する。今回の場合は聞くまでも無くBET4だろうが)、こちらはBET1にしておけば両者が不正解の場合は勝利が転がり込む、ということに今月になってやっと気づいた!

残念ながら今のままでは、参加者としては裏番組の「TIME OVER」(BS−i)の方が面白い(それはテレビ局の双方向サービスの充実度合いの違いが原因だが)。参加者もこっちの方が多いようだ。もっとも、同じ時間帯で競合していること自体が何より残念なのだが。

オンエア後も反響はほとんどない。まだBSデジタルが普及していないことを肌で感じた。それでも、見てくれた人からは、今までの出演番組よりも好印象を持たれたようだった。自分で見ても今までよりマシかな、とは思う。その理由は何か。リアクションを意識したこと(とはいえ、素で笑ったり喜んだりしている場面には勝てないが)もそうだが、その根底にはスーツを着ていたことがあると思う。それにより、多少「演じる」というか「オフィシャルな立場」としての立ち居振舞いができたのではないか。
スーツでクイズ番組に出たのは実は2回目で、最初は大学2年の時の「アタック25」だった。放送日が1月15日だったので、勝手に「新成人大会」だと思ってスーツを調達したのである(実際は上の学年の人との戦いだった)。その時は、慣れないスーツに緊張感が増してしまったが、社会人を4年もやっているとスーツの意味合いも大きく変わるのだなあと思う。今後もし他のクイズ番組に出る場合にもスーツを着ていこうと決めた。

いろいろな意味で、「社会人としての自分」を再確認させられた11年目の初勝利でした。

 
(おまけ)収録後にもらった伊武さんのサイン入り「BS日テレ」システム手帳。

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