第20回・・・「クイズ番組」を語る
- もともと「定例会見」には、クイズの問題の中では表現し切れない主張をまとめる、という目的があった。しかし4年目にもなると、ある程度の主張は問題(あるいは解説文)の中に込めることができるようになっているし、主張したいことそのものも減ってきている。今回は昨今の「クイズ番組」について、過去の主張もからめて述べていきたい。
- 相変わらずBSデジタルの双方向クイズ番組に参加するのが楽しく、ある程度の実績も残すことができている。しかし、「BSクイズ○冠王」だの「獲得賞金○○○万円」といった肩書きを振りかざすのは意味がないことだと思う。まして、「どうすれば勝てるか」といった話をするつもりはない。
- こう書くと、「対策」や「必勝法」を否定しているようにとられるかも知れないが、そうではない。現在の双方向クイズ番組ではそういう話はできないのだ。
- 双方向番組が成功するためには視聴者(=参加者)に「広く浅く」ご褒美が行き届くこと、つまり多くの人に「自分にもチャンスがある」と思わせる番組作りが必要であると感じる。事実クイズ番組の場合でも、一定期間内の獲得賞金に上限を定めたり、順位が上位ではなくても賞品が当たるようにしたり、ゲームの要素を増やしたり、知識では対応できない問題のウェイトを高めたりといった工夫により、賞品獲得者の固定化を防ぐ努力をしている。(もちろん知識で対応できる部分も多いわけだから、そのための「対策」を行うことも有効と言えよう。ただ、それだけでは他の参加者から抜け出すことはできないのが現状なのである。)
- こうした流れを私は歓迎する。ずっと前から求めていた「作る側と答える側とのせめぎ合い」(第1回・コラム6参照)が今まさに行われ、「答える側」としてそれに挑戦することができているからである。知識とセンスと勘を総動員して良い結果を残せるよう、これからも全力でチャレンジしたい。
- 「ミリオネア」成功の余波で、今度は「ウィーケストリンク」が日本に上陸する。正直、驚いた。もちろん私は、イギリスで「ウィーケストリンク」というクイズ番組が「ミリオネア」を凌ぐ人気である、ということを以前から知っていたし、イギリスに留学していた友人にルールを詳しく聞いてもいた。そこから導き出された私の結論は「絶対、日本ではできない」だったのである。
- 理由はいくつもあった。まず、他人を罵り投票で蹴落としていくという形式であること。それに、日本ではその結果与えられるのが最高1,000万円でしかないこと(「賞金」としては大きいが、己の醜さを晒した上での「代償」と考えると不十分な気がしたし、「5人1組」という縛りとの関連付けも難しいだろうと思っていた)。
- ただ日本版は、「蹴落とし方」を見せる番組にはしないのかも知れない。司会が伊東四朗さんということからもそれはうかがえる。また、同時期に始まる日本版「サバイバー」も、「蹴落とし方」より「参加者がこれまでに背負ってきたもの」にスポットを当てる演出をするらしいし。それならば、1,000万円も十分な「賞金」なのかも知れない。いずれにせよ、この手の番組をどう日本人向けにアレンジするのかが楽しみではある。しかし、仮にこうした番組が成功すると、もう「ウルトラクイズ」なんて必要なくなるのではないか、と思っているのだが(第18回参照)。
- 他の理由としては「今までの日本のクイズ番組の常識と大きくかけ離れているから」ということがあった。よく言われているが、残り3人の時の投票では1番強い人が落とされるケースがあるだろう(アメリカ版ではほとんどの場合そうなっているらしい)。つまり、強い人が勝つという図式ではなく、むしろ不利になるということである。「アタック25」などでは場合によって答えると不利になる場面があることはあるが、そうしたゲーム性の高いクイズでも、結局「勝負どころ」でクイズに正解した人が有利になるのが普通だった。この番組を機に「クイズに強い人が勝たねばならない」とか「クイズに強い人が最低限有利にならなければならない」という価値観も崩れていくのだろうか。まあ、あまりバリエーションを作りにくいテーマではあるが。
※話はそれるが、この投票という敗者決定方法。「1番強い人が落ちる」だけでなく、「美人、好青年は落ちにくい」とか「参加者の中に顔見知りがいたら結託し、他人を落しまくって2人で決勝に進み、どっちが勝っても賞金は山分け」という可能性もあるよねぇ・・・。
- 「日本のクイズ番組の常識とのかけ離れ」はもう1つある。そして私は、それが最も注目すべき点だと思っている。それは「複数の参加者がいるのに早押しクイズではない」ということだ。そう、これは日本で初めて放送される「BSQ」なのである!(第13回、第14回参照)
- テンポ良く、順番に参加者1人ずつにクイズを出していく形式。これは日本では「形式」として数えられてもいない。しかし、だからこそバリエーションがいくらでも考えられる。この点に気づく人はどれくらいいるだろうか。実はそれが、私の最大の楽しみなのだ。まさか「BSQ」がこんなに早く上陸するとは思わなかったから。
- 私はすでに「形式」として「BSQ」をとらえ、オリジナルバージョンも作っている。もし「ウィーケストリンク」を通じてこの「形式」に興味を持たれた方がいたら、是非私の「BSQ」も参考にして頂ければと思います。
- 考えてみると4月以降も、ゴールデンタイムのクイズ番組で、「知識を競う早押しクイズ」がメインのものは1つもない。もはや「クイズ=早押し」のイメージではないのかも知れない。もし「早押し機に触れることがクイズの入口だ」と思っている人がいるとすれば、それは今や敷居の高い、間口の狭い発想と言わざるを得ない。
- とはいえ、「知識を競う早押しクイズ」にも一定の人気と需要はある。「アタック25」も続いている。昨年の秋に応援で久々にスタジオに行ったが、「知識を競う早押し」ならではの緊張感も良いものだという認識があるのも事実である(他人が出ている時は)。
- そろそろ地上波にも出てみようか・・・。
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